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固定残業代の明示について 求人広告に起こる大きな変化とは?

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こんにちは、転職のミカタライターの佐藤です。
更新の間隔が空いてしまい申し訳ございません。言い訳ですが、12月は結構営業が忙しかったです(笑)本日は「固定残業代」について書きたいと思います。固定残業代って何?いくら働いても決まった金額しか支給されないの?・・・そんな疑問にお答えします。

固定残業代(固定残業制)とは?

最近求人を見ていると給与欄でこんな表記をしている企業があると思います。

月給250,000円以上(固定残業代含む)※固定残業代は20時間分38,000円、時間超過分は追加支給

以前からある表現なんですが、最近特に求人上で増えているんですね。特に営業系で探している方はちょこちょこ見かけると思います。「固定残業代」や「みなし残業」と呼ばれ、あらかじめ決まった時間の残業代を固定給として支給する給与形態です。ちなみに残業代固定は違法ではありません。ただし、しっかりとルールが定められています。

以下の3つが固定残業制を満たす要件です。

  1. 通常の労働時間に対する賃金と明確に分けられていること。
  2. 固定残業代に何時間分の残業代が含まれているのかが明確に定められていること。
  3. 固定時間を超えて働いた場合、別途割増賃金を払うこと。

これらの要件を満たすことはもちろん、就業規則雇用契約書等に明示し労働者側が同意していることが必要です。

固定の残業時間分があらかじめ残業代に含まれているので、残業をしなくても定額でもらうことができるという点ではいいですが、実情としてはそんなにメリットはありません。

なぜ企業側は固定残業代(固定残業制)を使うのか?

理由はいくつかあります。

  • 固定給を高く設定することができる。
    月給20万円+残業代と月給25万円(固定残業代込)だと後者の方がぱっと見良く見えるんですね。ということは、求人を出すときに人が集まりやすくなります。
  • 給与計算の手間を削減。
    残業代が固定なら、規定の残業時間を超えなければ残業代の計算が楽になりますね。その分経理職の負担軽減にもつながります。
  • 残業代を含めた人件費の予算が組みやすい。
    固定残業制にすることで人件費の計算がしやすくなり、経営上、予算管理や戦略が立てやすくなります。
  • 規定の残業時間で業務を時間内に終わらせるよう効率化する。
    管理者(役職者)側の業務になりますが、人件費を削減するため業務を効率化し、残業を減らすことができる。労働者側は、残業を少なくしても固定で支払われるのでメリットがある。仕事が遅く、残業したほうが給料が良いという不公平さを解消することもできる。

ざっと思いつく限りでこんな感じではないでしょうか。

残業代削減目的という見方もありますが、それは誤った情報です。なぜなら、固定の残業時間を超えた分は追加で支払う必要がありますし、残業が少なくても固定分は支払わないといけないので、残業代を削減できるということはありません。

固定残業代(固定残業制)の実情

企業側のメリットは上に書いた通りですが、労働者側から見ると実はあまりメリットがないのです。固定残業代という制度を悪用して違法な労働が行われているケースが多々あります。

  • 固定の残業時間を超えた分の残業代を支払わない。
    「固定残業代だから~」という理由で割増賃金を払わないケース。もちろん違法です。固定残業の要件で書いた通り固定残業時間を超えた場合は、別途支払う必要があります。
  • 労働者側に明示していない。
    たとえば、月給28万円という求人をみて入社したけど、ふたを開けてみると基本給が18万円で、固定残業70時間分を入れて28万円というケース。月給28万円で残業をしたらプラスで支払われると思っていたものが、70時間以上残業をしないと支払われないと知らずに入社したらおかしいと思いますよね。
  • 残業時間の調整を行う。
    固定残業の時間を超えた分を支払いたくないため、固定の残業時間以上の申請をしないよう圧力があるケース。タイムカードを押した後に業務を続けたり、家に持ち帰って仕事をさせたりして超過分を支払わないことがあります。もちろん違法です。

このように固定残業代とは名ばかりで、ただの違法労働をさせているブラック企業が存在しているのです。そして、定時で仕事を終わらせて残業をしなくても残業代が支払われるというメリットもありますが、固定残業代にしている仕事はほとんどが残業が発生する前提の上定められているのであまり意味が無いのです。※私が担当している企業で、残業がほとんどないのに固定残業30時間分つけている会社もあるので例外もあります。

なぜ固定残業代を求人に記載している会社が増えているのか?

さかのぼること1年前になりますが、2015年10月1日に「若者雇用促進法」という法律が施行されました。その中で、固定残業制を採用している企業に対して、【固定の残業時間】【固定残業代の金額】【固定の残業時間を超えた場合追加支給する旨】を明示することが義務化されました。これにより、給与の記載について各求人サイトが厳しく審査することになりました。

これまでは、固定残業代が給与に組み込まれていても、記載していない企業がほとんどでしたが、今は記載しないといけません。求人を掲載している企業が嘘をついて固定残業を記載していなかった場合、何十万円・何百万円の広告料を払っていても、途中で掲載がストップされてしまいます。また、次回以降も(きちんと記載しないと)掲載ができなくなります。若者雇用促進法の施行から1年が過ぎ、各求人サイトも本腰を入れて取り締まりしているので、しっかり記載する企業が増えているということです。

ブラック企業の見極め方

固定残業代は、しっかりと要件を満たして、求職者に明示すれば違法ではありません。固定残業代というとブラックなイメージもありますが、多くの企業・職種で採用しており、一概に悪いとも言えません。固定残業代ではない企業でも残業代を支払っていないケースもありますし、残業代という概念すらないブラック企業もあるくらいです。では、どうやって求人を見極めたらいいのか?

  • 残業代“全額支給”を打ち出している求人を探す
    残業代を支払っていない企業は「全額支給」と表立って書きにくいです。
  • 固定残業に含まれる時間をチェック
    20時間くらいの少ないところならOK!45時間超は注意。
  • 口コミサイトをチェック
    求人だけで100%真実を読み取ることは難しいです。企業の口コミも確認して総合的に判断しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?各求人サイトが審査を強化しているので、今後さらにしっかり記載している企業が増えてくると思います。「固定残業代だから悪い」という判断ではなく、「何時間くらいの残業があるのか」「業種や業界の水準と比べてどうなのか」「残業代を除いた基本給部分はしっかり支給されているのか」など総合的に判断してください。

また残業時間だけが転職のポイントではありません。例えば、不動産系の営業など長時間の残業は当たり前になっていますが、その代わり給料に思いっきり反映されるという業界もあります。あなたがどこを重視して転職したいのか考えてみてください。

今後、厚生労働省や全国求人情報協会、各サイトの取り組みで、求職者目線の求人情報は増えてくると思います。併せて口コミサイトや転職エージェントの生の情報も手に入れて転職活動を成功させましょう!